自分の名前も忘れるほど

あめちかる storyteller 鳥山美由紀( とりやまみゆき Miyuki TORIYAMA ) のブログです。

出版社さんという名の、ハイコンテキストを統べるもの

出版社 書肆汽水域 代表の北田 博充様よりご恵贈の「芝木好子小説集 新しい日々」。最近、志賀直哉を再発見した身。平易かつ普段使いの世界観を描く筆が、無名で何者でもない「誰か」の心柄に受肉させる、その小気味よさを感じる。

 

作品世界よりも前に、強く触れておきたいのは書籍の顔立ちと佇まいだ。ここに感応がある、持つ人の所作を変えるほどの。

 

私事ながらデビュー時は、書籍の成り立ちを学ぶべく水道橋の印刷博物館まで見学に行った。
拙作の印刷ご担当は当時、5本の指に入ると謳われた技術者Nさま。原稿や機械への眼差し、扱いの所作ひとつで只者ではないことを素人にも思い知らせる方だった。二条城襖絵などの美術本を手がけておられるニッシャ様の聖域、手術室のような印刷台を特別に見学する機会を得た折の興奮、拙作の紙質(金毱3号!)も未だに覚えている。

加えて、伝統的工芸品プロデュース時代は活版印刷、函、紙についても工房を訪れてはパッケージデザインなど検討してきた。

 

前置きが長くなった。

こんな奥付は、もうシズるしかないのだ。

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函だけでこのクオリティ

 

もし小説がものせたなら、このようなフォント、組版、装丁のUIをどれだけ嬉しく好もしく感じることかと思う。作品世界の拡張機能であり、そこにたどり着く前にある結界を超えるための、翻訳機能でもあるからだ。

コンテンツというソフトがあり、出版社さまの目利きという演算装置があって成体原基が決まり、ボディプランが構築され、神経と共に血脈が張り巡らされてゆく奇跡と、それを叶える「人だけができる仕事」を想わずにはいられない。
出版社さんは、キュレーターであり、コンダクターだ。

 

◆お取り扱いは 蔦屋書店 梅田店 他とのこと。

https://kisuiiki.com/?p=319