自分の名前も忘れるほど

あめちかる storyteller 鳥山美由紀( とりやまみゆき Miyuki TORIYAMA ) のブログです。

見えない関係性を知る

4月にも「進化思考」のレビューを投稿したけれど、Amazonへのレビュー分もこちらに転載。

 

 

ざっくりいうと、本書は創造にまつわる、『見えない関係性を知る』ための手引きである。そのふるまい方を身につけられるように、具体的なワークが50もある教本だ。

まずはエラー/変異ありき、というメッセージも本書から受け取った。
同質性を求められてきた現代日本にあって、主観で発信すること自体が憚られる社会圧は否めない。変異を受容する、レセプタのありかたも肝要だと考える。そのヒントになるのが本書の「適応」だろう。

読後の第一印象は、「完成させようとしないこと」。変異と適応は、トレードオフではない。スペクトラムである。シンプルにアクションとリアクションとして、呼応してゆくのだ。

動的といえば、私たちの身体もだ。
シェーンハイマーが窒素同位体で示した通り、私たちが経口した食材は、分子レベルで身体の細胞と置き換わる。食物は95%が植物由来とされる。人体は植物という巨大演算システム経由の、土壌データのリアルタイム3Dプリンタとしか想えない。

地球そして生命にダイレクトに接続する食と性は、究極の情報交換であるといえる。変異と適応もまた、情報交換を成す演算機構だ。
スペクトラムに応じ合うこのダイナミズムを活写する本書は、生命が動的であることを再認識させてくれた。

最後に、本書のジャンルがビジネス書に分類されている点から、その方面のことにも私見を少々。
分配とトレードオフ
フロー経済の根幹をなす、「生産性」と呼ばれる強力な呪文に対する、私のここ数年の命題だ。この呪文を発出する現在の資本主義を形作った株式、銀行、貨幣、保険などの金融を基盤とする原理は、イギリス人が百年足らずで作った「変異」だと見立てることはできないだろうか。

DXもまた、動的である。
社会実装されることで、ファイナンスが変わる可能性に個人的に期待している。
DXは「そもそも」を問う、濃密な対話なしに実装不可能である。DXを思考するための肝であるアーキテクトは創造性が不可欠。行動原理あるいは主体としての私たちのありかたが問われる、という認識をしている。
「そもそも」は、主語が大きい。そこで本書である。大きな主語を共有する手がかりとしても、有用な手引きになると見込める。