自分の名前も忘れるほど

あめちかる storyteller 鳥山美由紀( とりやまみゆき Miyuki TORIYAMA ) のブログです。

神話の誕生

人生において意味ある書籍は200冊程しかない、といった作家がいた。

この一冊は、まさにその一冊だと思う。
テッド・チャンの「息吹」。
f:id:amechical:20191206104858j:plain

表題作の「息吹」。無機的な筆致が、有機的な生命の輪郭を色濃く描いている。
ペンローズ著「皇帝の心」から想を得たという。私も「微小管に意識が宿る」仮説を着想したとき、既に同じような仮説が出ていないか検索したらペンローズにたどり着いたことを思い出した。

私は心の調子が思わしくないと感じたとき、呼吸を意識している。まず、吐く。「呼吸」という単語は発明だとすら思う。まず、吐く。これでたいてい調律される、少なくとも改善する。
そんな、生きるためのささやかなコツのようなものが詰まっている。
私たち人類はまだ、生命の定義すらできない。それでも、ここに、生命は確かに描かれていた。

古事記に通じる香りがするように感じた。
国史、神話というものは、いかに我が国や我が神が崇高で完全無比で尊いかを徹底的に設定するものなのに、人間臭くてみっともなかったりする類いのエピソードがふんだん。
すべてを包摂していくその世界観が、通じるように思えた。

9編同時に読みたい、孫宇宙のように同時に確かに存在する世界たちが一冊に。

装丁も格が感じられる美しさ。
所有する喜びが増します。
f:id:amechical:20191206104911j:plain

とりやまみゆき
storyteller