自分の名前も忘れるほど

あめちかる storyteller 鳥山美由紀( とりやまみゆき Miyuki TORIYAMA ) のブログです。

オメラスを去りゆく人々

大学の、古書コーナーで手にしたのが出合い。
天安門事件そしてベルリンの壁が崩壊した1989年、中村哲先生が、ご活動開始から5年のタイミングで上梓された書。

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筆は、サンダルのワークショップ開催と自走する生産体制の確立のエピソードといった現地でのご活動の他、近代化、地政学、宗教、政治、経済、技術革新、精神性にまで触れることで『オメラス』のような事実を活写してゆきます。

オメラスとは、「オメラスを去りゆく人々」という短編小説に描かれる「ある契約」により成り立つ、ユートピアそのもの、豊かで幸福な生活を約束された街の名前です。

満ち足りたオメラスを去りゆく人々は暗闇のなか、二度と帰ってこない。そして必ず一人で旅立つといいます。その姿は、行く先を心得ているらしくみえる、と描かれています。
中村先生のお仕事を報道で知るにつけ、オメラスを想わずにいられません。

蝶を愛してかの地に赴き、「濃密な人間」に向き合い続けられた、「余りの不平等という不条理に対する復讐」。終章「トウキョウ」を撃て、を今、読みなおせて感謝。
R.I.P