自分の名前も忘れるほど

あめちかる storyteller 鳥山美由紀( とりやまみゆき Miyuki TORIYAMA ) のブログです。

問答無用な仕事

拙作「あれこれたまご」の印刷会社は、美術本を得意とされるニッシャさまです。
先日、第1回IR産業展でブースを出しておられたので、ご挨拶しました。私がお世話になったのは15年近く前のこと。対応くださったのは若い社員さんでしたが、当時の製版ご担当のNさまは有名らしく、すぐ話が弾みました。

かつて見学の機会をいただいた、手術室のような製版室には最新鋭の機材がずらり。職人さんは、物静かな方。デジタル製版でできること、難しいことを簡潔にご説明下さった。

素人がリクエストを言うは簡単。
私はほしい再現イメージ、特にこだわりたい色みについてお伝えした。

福音館書店の編集さんは、この道一筋の大ベテラン。打合せ帰りの道すがら、教えて下さったことは

いわく『ぼく(数十年もこの仕事していて)製版室に入れたのは初めてなんですよ』。
いわく『さっきの(製版担当の)Nさんは、業界で5本の指に入る方らしいです』。

後日、届けられたサンプルに息をのんだ。

素人でも判るクオリティ。
これは「生鮮もの」だと感じた。

色が、滴っていた。
息遣いを感じた。

職人技が、0と1で構築されるデジタルツールを介して、血の通ったナマモノに仕上げて下さっていた。

かくして色校正は、ほとんど不要に終わった。

無事に出版され、礼状を出した。Nさんからの葉書には『いい作品を作ってください』と直筆で添えて下さっていた。

手練れの仕事は、私のような凡才の心に刺さり、魂を揺さぶり、確かな糧となっている。
意識の位相を、引き上げて頂いている。

問答無用な仕事を、私もしたい。

とりやまみゆき